CHD-U 研究計画の在り方に関する提言

Summary

本提言書は、核融合科学研究所(NIFS)における大型ヘリカル装置(LHD)実験終了に伴うポストLHD計画および新装置(CHD-U)の在り方について、ワーキンググループが審議結果と指針をまとめたものです。位相空間物理の段階的推進、大学やQSTとの有機的な学理探求連携ネットワークの構築、人材育成や技術継承、明確な目標設定とコミュニティー全体の合意形成に向けた提言が示されています。

1. 審議結果と提言

CHD-U 研究計画の在り方に関する提言 令和 8 年3月2日 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ

  1. 審議結果と提言

1.1 ワーキンググループの設置 現在、核融合炉実現に期待する社会的機運が高まっている。その中にあって信頼性ある核融合炉の実現に残された課題は多く、健全かつ誠実に核融合炉を実現するためには安全な炉心プラズマ制御のための物理学的理解および核燃焼を支えるための革新的技術などを含む核融合科学の確立が焦眉の急である。核融合科学研究所は 2025 年度の LHD 実験終了に際し、核融合炉実現の基盤となる核融合科学の確立を目指した学術路線へ変更することをロードマップ 2023、核融合科学研究、共同研究、大型プロジェクトの3つの「在り方」に関する提言において宣言している。それを具体化するための新装置製作を含むポスト LHD 計画の「在り方」を定めるべく、本ワーキンググループが設置された。

1.2 ワーキンググループでの結論 本ワーキンググループでは、MCPoP プロジェクト推進本部において進められているポスト LHD 装置の現状案に加え CHD および CFQS 計画が研究所側からはじめに示され、続いて研究所内外の有識者の意見聴収に続き審議を行ない、ポスト LHD 計画の「在り方」について以下の結論を得た。 ・ 現状案を参照しつつも、ポスト LHD 計画の目標を明確化し広く大学研究者を巻き込んだ実現が必要であること、 ・ ロードマップ 2023 に示された位相空間構造の物理学の推進は挑戦的長期課題であるため、位相空間が関わる探求可能な短期的課題を段階的に解決しつつ計測の高精度化を進め、長期的展望を以て位相空間が関わる核融合科学の研究を推進すべきであること、 ・ 核融合科学の基礎学理、例えば核融合科学研究所創立時に掲げた目標「トロイダルプラズマの総合理解」の達成は、単一の装置での推進は困難であり国内外のプラットフォームとの有機的連携が不可欠であること、 ・ ポスト LHD 装置は、国際的な核融合炉開発研究およびプラズマサイエンスの潮流の中で必要とされる装置として実現されるべきであること、 ・ 大学の核融合科学分野がサイエンスとして評価されることを考えると、その存続のためには、顕著な学術的成果をあげ続けることが必要である。その中心となるポスト LHD 装置には核融合科学および学術的に意義を持つ明確な目標を設定すること、が第一であること。

1.3 ワーキンググループからの提言 上記結論を踏まえて新装置製作を含むポスト LHD 計画の主たる指針3点を提言する。 (a) 新装置検討に関する特別チームの編成: 現状案に配慮しつつより優れた計画の実現を目指しコミュニティー全体で検討をするチームを発足することを提言する。チームが留意すべき観点として、◯ 分野の特性として観測対象を自らが製作し観測対象が将来の分野の発展を決定づけるため、製作されるプラズマが極めて重大な意味をもつこと、◯ 核融合科学の学術基盤を提供し開発研究に寄与すること、◯ 今後サイエンスで評価されるとすると、他の有力大型プロジェクト研究を凌駕する学術的成果が要求されること、を挙げる。また、プラズマ核融合分野の中核となる装置であるのでコミュニティー全体の合意形成は不可欠で分野全体に計画の詳細および進展を周知することは前提である。 (b) 位相空間物理に関する特別チームの設立と段階的推進:核融合科学に関連する位相空間の物理学を探求するために、実験、理論、シミュレーションからなる特別チームを設立することを提言する。長期的視点に立ち、まずは実現可能な中短期的目標の解決を目指し段階的に研究を進めることが必要である。 (c) 学理探求のための連携ネットワーク構想と柔軟な体制整備:単一の装置では核融合科学研究所の目的を十全には達成し得ないとの認識に立ち、「学理探求のための連携ネットワーク」を構想することを提言する。たとえば、クロスアポイントメント・デバイス(仮称)等の概念も活用しつつ、予算措置を伴った強固な研究プラットフォームを構築し、複数装置・複数拠点による連携研究を推進する。また、研究の進展に応じて短期的目標を機動的に見直しうる柔軟な運営体制を整えることが不可欠である。

1.4 計画の実施上の留意点 最後に、燃焼プラズマおよび核融合発電実証が待たれる現代、核融合科学研究所が学術をして世界に冠たる研究所に並び立つためには、核融合科学がサイエンスの最先端であること、また工学においては核融合燃焼を支える技術革新をもたらすこと、が求められる。そして、核融合科学としての学術基盤や技術基盤の提供を通して開発研究および核融合炉の早期実現に寄与することが不可欠である。その実験部門の中心として在るのがポスト LHD 装置(CHD-U)であり、新時代の核融合研究における国内外の大学における研究装置の雛形でもあり、今後の核融合科学のあり方を決定づける重要な試みである。プラズマ核融合分野全体での十分な検討と合意を以て計画を進めることが求められている。

2. ポスト LHD の背景と条件

  1. ポスト LHD の背景と条件 本節においては本ワーキンググループの背景となった核融合科学研究所を取り巻く現状を整理する。

2.1 LHD 計画の発展 核融合科学研究所の発足時、核融合科学研究所発足時の LHD の目的として、平均ベータ値5%以上の高いベータプラズマ、および無電流プラズマの長パルス実験を実現するなどの工学的課題のほか、より普遍的な物理課題としてはトカマクとの相補的研究を行い「トロイダルプラズマの総合的理解」に貢献することが謳われている。この課題は昨年 12 月の LHD 実験の終了に際しポスト LHD に受け継がれる。

2.2 ロードマップでの提唱 さらに、LHD 終了後のシナリオが述べられているロードマップ 2023「超高温プラズマの「ミクロ集団現象」と核融合科学」には、◯ 核融合エネルギーの実現に対する科学的リスクの中心課題を集団現象が創発するミクロ階層に分け入ることで解明し、プラズマ物理と核融合科学のフロンティアを切り拓く、◯ プラズマを「集団現象」の探究にとって絶好の研究対象として位置付け、プラズマサイエンスおよび核融合科学を集団に見られる学際的課題(秩序、乱れ、階層性、循環、持続性、突発現象など)の解決を目指す学術分野として推進する、◯ プラズマの構造形成およびダイナミクスを特徴づける位相空間(実空間、速度空間、時間)に関連する現象の探求に焦点を当て、プラズマの集団運動のこれまでにない高精度な計測を開発する、◯ 精密な実験・データ科学・理論シミュレーションによって集団現象の理解を深め、プラズマ物理の学際的展開を図る、としている。

2.3 NIFS の「在り方」 また、核融合科学研究所では、ロードマップ 2023 の策定と並行して3つの在り方ワーキンググループが設置され、それぞれ。核融合科学研究、共同研究、大型プロジェクトの「在り方」に関する提言がなされている。「今後の核融合科学研究所の在り方についての提言」として、ポスト LHD においても、◯ 核融合科学分野において世界的トップレベルの研究所であるために…核融合エネルギーを実現・利用するための重要かつ未解決の学術的課題あるいは核融合科学から生まれる新しい学術的課題を見極め、それらの解決と学問としての普遍化に向けて、世界に先駆け、かつ主導的に所員及び共同研究者が挑戦できる環境を醸成する、としている。次に、「今後の共同研究の在り方についての提言」では、◯ 国際的競争力を持つ最先端学術研究を幅広い分野の研究者や学生の積極的な参加による協働によって実施すること、◯ コミュニティーからのボトムアップにより、各大学単独ではできない規模の研究を共同研究として実施すること、◯ 研究プラットフォームとして国内外の大学・研究機関が有する施設を共同利用できる柔軟性ある制度を構築すること、が謳われている。最後に「今後の大型研究施設計画の在り方についての提言」では、◯ 研究所の大型研究施設計画が ITER に対していかなる貢献ができるか、◯ 炉のコンパクト化、核燃焼プラズマの制御など開発研究の最前線の指導原理となる科学的知見、プラズマの性質を精密かつ体系的に理解するための学術的な基盤が必須、とある。さらに ◯ 大型研究施設計画は、広い分野から求心力があり、規模や特徴の異なる実験装置と理論・シミュレーションを体系的に包括するテーマ指向型の研究計画であること、◯ 研究対象に関する認識方法の高精度化の追究、そして、新しい問題の発見・定式化の二つに要約される、とある。 本ワーキンググループの提言及び結論は、この3つの提言を踏まえることを原則としている。

3. 有識者見解の概説

  1. 有識者見解の概説 本ワーキングループでは外部有識者として伊藤公孝顧問(中部大学)、小菅佑輔准教授(九州大学)、吉田麻衣子博士(QST)、仲田資季准教授(駒澤大学)、徳澤季彦教授(核融合科学研究所)、出射浩教授(九州大学)、吉川正志准教授(筑波大学)の意見を伺った。本節ではそれらの意見を「計画について」、「位相空間構造と計測の高度化について」、「連携研究について」の3つの観点において纏めたものを示す。

3.1 計画について ポスト LHD 装置はプラズマ核融合科学研究分野の学術研究の中核装置となる。その装置および実験計画にとって最も重要なのは、核融合科学およびサイエンスの分野において切望され国際的に卓越した成果を創出できる優れた研究課題を設定することである。核融合科学は、天文学など自然界にすでに存在する対象を研究する多くの分野とは異なり、研究対象そのものを自ら創出しなければならない。そのため、装置設計と研究目的は不可分であり、研究目的の明確化が装置選択の原理であり、生成されるプラズマはもたらされる成果を決定づける。また、成果の観点からは、位相空間構造の探究のようにこれまでの観測では予測できなかった現象を視野に入れるなど裕度を持つことも不可欠であろう。総じて、解決すべき課題と高精度化によってもたらされる成果の明確な予測と問題設定が最初に行われるべきである。 具体的な課題設定については、現在掲げられているロードマップで掲げられている「超高温プラズマのミクロ集団現象」、特に位相空間構造を通じたプラズマの総合的理解は長期的かつ普遍的な学術的大テーマであるが、それを支える中短期的な具体的な研究課題を明示することが必要である。核融合科学研究所としてはこれまで積み上げてきた LHD 等の成果を取り纏め、残された課題を抽出し、未解明課題を出発点とした「継続性のある研究計画の構築」がポスト LHD 計画を通して展開されることが求められる。例として、線形・局所・決定論的描像から、非線形・非局所・確率論的描像へと移行した現在では、今後乱流局在、非平衡性の拡張、加熱や粒子供給がもたらす動的応答、突発現象(ELM や崩壊現象)といった未解明課題がある。特に、突発現象については、開発研究からも求められる重要な課題であり、学術的にも、乱流構造の非線形遷移として捉える視点もあり位相空間に踏み込んだ計測と解析が期待される。さらに、燃焼プラズマは多粒子種・多エネルギー・多スケールが混在する「新奇なプラズマ状態」でありポスト LHD 計画では燃焼そのものを行わずとも開発研究にも貢献する有意義な新領域の開拓ができる。また、NIFS が世界的に強みを持つ帯状流に関する研究は、非線形・磁場の幾何効果・分布関数構造の観点からさらに深化することが可能な研究分野である。そのほか、装置設計の考え方として「最適化」という概念は有効であろう。具体例として、「位相空間構造の計測に適した条件を優先する最適化」のほか、「プラズマ自身が到達しやすい状態を踏まえた最適化」、「無衝突力学系としての性質を考慮した最適化」などである。明確な目標をもった研究を推進することで、NIFS 発の研究成果が国内外の研究者を惹きつけ、分野横断的な学術の中核となることが重要である。 最後に、ポスト LHD 装置はプラズマ核融合分野学際的共同研究の中核となる装置である。装置を有効に機能させるためには、広く個々の研究者の熱意を十分に汲み取ることが重要である。ポスト LHD 装置の建設については、核融合科学の特質を原点に立ち返って再確認し、研究目的と意義を明確に構成する手順を検討すること、また、研究者自身が誇りと切実さを持てる、例えば「NIFS 共同研究「FUSION2030」の活動の一貫としてまとめた 52 の学術課題集」にあるような研究テーマを共有することが必要である。広く公開された方法(FAQ 公開や課題公募、分野外からの批判的意見)により衆智の集約を通じて、計画そのものを磨き上げていくことが求められている。

3.2 位相空間構造と計測の高度化について 位相空間構造の物理学は厳密には空間3次元、速度3次元、および時間を合わせた7次元を高精度に計測することが必要な課題である。厳密な7次元計測は現時点では不可能であり、当該研究として、間接的ではあるが位相空間構造として顕在化する現象を意識した計画が重要である。すなわち、乱流輸送、閉じ込め遷移、突発現象などの集団的挙動の背後にある位相空間構造を定量的に捉え、プラズマの理解を質的に進展させ、核融合科学に大きな革新をもたらすことが必要である。 位相空間を捉えうる計測法としては、位相空間構造の計測器として荷電交換分光、協同トムソン散乱、トムソン散乱、電子サイクロトロン放射などの候補があげられる。それぞれの計測方について、信号強度・時間分解能・空間分解能を考慮しどこまで現実的に測れるのかを第一に考慮すべきである。観測対象としては、理想的には分布関数自身や、エントロピーの実空間・速度空間へのカスケード(非線形位相混合、双カスケード)を捉えたいが、計測限界が厳しく近未来には非現実的である。現時点では、達成可能な課題や目標を明確化することが不可欠である。例えば、直接計測することに対して間接的に密度・温度・電位などの揺らぎを「準粒子」として捉えることなどが現実的である。 また、プラズマ生成装置としては近接性が重要である。位相空間乱流研究では、ポート配置・視線設計が極めて重要である。位相空間の観測に特化した装置設計、あるいは、ポスト LHD 装置以外の機動性に優れたトカマクや直線装置も活用し支援装置として活用するなど戦略的な連携研究による目標の達成も有効である。一方、現状のポスト LHD 装置設計については閉じ込め配位の自由度を重視しているが、配位自由度の確保と位相空間構造を精密に計測する能力との間にはトレードオフが存在しうる。装置設計において「位相空間構造の計測に適した条件を優先する最適化」は一考に値する概念である。最も価値ある配位と学術課題を定め、それを徹底的に最適化することが科学的には自然な進め方である。また、位相空間構造研究を通じたプラズマの基礎的理解は、将来的に核融合開発研究への貢献につながることを明示することが重要である。極めて挑戦的な課題ではあるが位相空間乱流研究は、計測可能な目標を理論・シミュレーションと協働で設定することで着手可能な段階にある。そこで、理論・シミュレーション・実験・計測・解析が一体となった議論の場、組織や装置の枠を超えた柔軟なチームあるいは共同研究体制を編成し研究を推進することを提案する。

3.3 連携研究について 大学との連携によるネットワーク型の研究推進はプラズマ核融合分野が抱える研究課題を解決する上で有効な戦略である。トロイダルプラズマの総合理解は、多様なトロイダル配位に結びついた複雑な要因が存在する中で、NIFS における単一の装置で成し遂げることは不可能な課題である。そのために、ポスト LHD 計画の立案では、装置製作および装置連携について計画当初から大学研究者と共有することが不可欠である。また、有機的連携には、分野の研究者に「自分たちの装置」という意識を醸成することも肝要である。そのためには、連携研究における研究者の役割分担、研究上の責任を明示し、大学研究者がポスト LHD 計画に主体的に参加できる予算措置、共同研究者や装置が密接に連携できる制度や体制を構築することが必要である。 一方、開発研究(QST)との連携については、開発研究が担う核融合研究の主軸は、ITER およびその先の原型炉開発を見据えたエネルギー実現に直結する研究である。JT-60SA をはじめとする大型トカマク装置では、高温・高密度・高閉じ込めプラズマの実現や運転シナリオの確立、定常運転技術の高度化などが進められている。開発研究を着実に前進させるためには基礎的な物理理解が不可欠であり、特に、輸送現象、乱流、高エネルギー粒子由来の諸々の物理現象、学突発現象(ディスラプション、ELM 等)などの課題は、学術研究との強い連携が求められている。しかし、ITER や原型炉段階では実験条件が拘束されるため、例えば、ミクロ集団現象や位相空間構造に踏み込んだ高エネルギー粒子がもたらす位相空間の歪みが引き起こす物理現象の基礎学理は開発研究では直接取り組むことが難しい課題である。そのため、NIFS を中心とした大学での学術研究には、研究自由度の高いポスト LHD 装置を中核とし理論やシミュレーションと協働した連携研究を通して、開発研究に有用な基礎的知見を提供ことが求められている。特に学術研究が近未来に実現される燃焼プラズマ物理理解を深め燃焼プラズマの振る舞いの精密な予測を可能とし不可欠な学術基盤として開発研究を支え核融合炉の早期実現に寄与することが求められている。

4. 5つの観点について

  1. 5つの観点について

(1) 課題設定に適う装置概念に求められる点は? 課題設定について: 第一に新装置によって解決すべき課題を明確に示すことが重要である。これまでの経緯から NIFS が設定している課題「位相空間構造の探求に基づいたトロイダルプラズマの総合理解」は長期的大目標である。新装置の目標を設定するにあたっては、長期目標を段階的に分解し一人の研究者の研究寿命の間に解決できる 10 年ほどで解決可能な中短期的目標を設定することが現実的である。条件としては、物理学をはじめとする普遍的な学術に寄与すること、また開発研究から望まれる核融合炉実現のための学理基盤となること、である。また、今後、核融合科学研究所を含む大学のプラズマ核融合コミュニティーはサイエンスとして評価されることとなる。学際的研究として大いなる成果が得られる課題を設定することが必要である。LHD において 30 年間行ってきた研究を総覧し残された課題を抽出し、CHD、CFQS の流れの中ポスト LHD 装置へ継承しそれぞれの装置が目指す課題の発展性を確保した明確な課題設定がなされるべきであろう。具体的な課題として燃焼混合、帯状流、乱流偏在などの候補が本ワーキンググループでは挙げられている。また、プラズマ核融合科学においては、他の多くの自然科学分野と異なり研究対象を自ら生成する。研究対象が研究課題と密接に結びつきどのようなプラズマを作るかが得られる成果に直結している。LHD 自身は当時世界にも稀な超伝導の最も大型のヘリカル型装置として大きな注目を浴びた。一方、ポスト LHD 装置は中小型装置である。国際的核融合研究に新しい潮流を作るためには画期的な概念と実現可能性が求められる。 位相空間構造の研究:ロードマップ 2023 に謳われている課題、位相空間構造の観測に基づいたミクロ集団現象の解明に寄与できる装置であることが必要である。しかしながら、ミクロ集団現象や位相空間構造のみに特化した課題であれば、安価な装置でより効率的に研究可能であると想定される。ポスト LHD 装置における位相空間の物理探求は核融合科学に結びついていることが不可欠である。その意味で、まずは位相空間構造の探求が如何に核融合科学に寄与するかを広く周知し、装置自身は、物理装置として機動性、柔軟性、近接性に富むことが求められる。位相空間の物理探求も、厳密な意味において時空間4次元、速度空間3次元、併せて7次元の座標における高精度の観測が必要である。時空間における全域観測も行われていない現在では極めて長期的な課題である。そのために、できるところから始める姿勢が肝要で、中短期的に手の届く位相空間が関連した課題を設定し順次解決を目指すことが現実的である。例えば、準粒子の観測や位相空間構造が顕現する物理現象の解明など段階的に目標を達成してゆくことを推奨する。

(2) 共同利用・共同研究のプラットフォームとして求められる点は? 連携の中心装置として:ポスト LHD 装置はプラズマ核融合分野の中核装置としてコミュニティーの合意に基づいて実現されることが条件である。また、大学では実現できない規模の世界を先導できる装置であることが求められる。ポスト LHD 装置では、位相空間の集団現象といった固有の目的はもちろん必要であるがコミュニティーの要請、例えば、プラズマ壁相互作用研究を始め多様なテーマを把握し各研究者の様々な課題に対応できることも求められる。単一装置において困難な課題の場合は複数の装置が連携した協働研究体制において解決すべきであろう。 国際的な連携のあり方:現存する装置の特性や特徴を考慮し、国内外の情勢と実現規模を考慮し、国際的に核融合科学に貢献できるユニークな装置であることが求められる。例えば、ロードマップに謳う「プラズマの総合理解」の解決には多様な配位の連携研究が不可欠となることは明らかである。また、位相空間構造の探究も計測装置の特性によって観測に適したプラズマが存在する。その意味でも様々な装置の連携が必要であり既存プロジェクトあるいは各プラットフォーム間の有機的かつ互恵的連携を重視することが肝要である。 共同研究の進め方: 先の議論と同様に長期的、中短期的な課題に分け大学全体で進めてゆくことが望まれる。中短期および長期目標を設定し、時制に合わせ短期目標を迅速に決定、柔軟に実現できる連携体制が必要である。さらに、個々の研究者の独自の研究課題を受け入れる個と全体とバランスの取れた研究運営が望まれる。

(3)装置の建設以外に研究計画上、留意すべき点は? 大学との密接な連携: コミュニティーの中心装置として計画策定段階から大学の参加を促し、広く大学に責任ある役割を分担できることが重要である。合衆国のように計測器の担当機関をもうけるなど、大規模な予算措置を実施し大学に積極的な参加を求め責任を持たせることが重要である。連携においては、例えば、時制に合わせて年度ごとに短期目標を決定しそれに従うプロジェクトを設定すること、また進行状況の評価、評価に基づき計画や連携体制に対しフィードバックする仕組みも重要である。 分野基盤の有効活用と継続性:NIFS では主として CHD、CHD-U プロジェクト、さらに連携による CFQS プロジェクトが現在進行している。今後、研究の進展に伴い上記に加えプラットフォーム内の装置の必要度や重要度が変わり成果を最大化するためコストやマンパワーの再配分が必要となることは想像に難くない。有限な資源を効率的に活用し、研究者(特に若手)が存分に実力を発揮できる環境/体制づくり、研究成果を最大化する工夫が必要である。最適化を可能とする柔軟かつ機動的な共同研究体制の確立、また、最適化の評価体系を設定することが必要である。 人材育成と技術継承:核融合科学は長期的な課題であり、それを支える優秀な人材の育成が不可欠である。人材育成においては大学が基幹的役割を担うことに変わりはないが、核融合分野全体(NIFS、大学、QST)で協働した、俯瞰的な視点に立った人材育成の体制が必要であろう。現在、JIFS、ITER スクールほかが開催され人材育成会議が NIFS に設立されるなど、核融合分野の協調による優秀な人材の輩出が期待されている。一方で、LHD 装置が運転されていた約 30 年間に大学には装置の建設経験者が少ないことを考慮すると、その充実を図り、今後核融合装置の建設の技術の伝承にも配慮することが必要である。人材育成、技術継承に包括的な配慮をした研究体制であることが重要である。

(4) 今後の進め方において有効な組織、制度などについて 推進体制と組織の構築:ポスト LHD 計画に核融合科学分野全体を巻き込み優れた計画として実現するために、ポスト LHD 概念設計チーム(仮称)を早急に編成すべきである。現在 CHD および CHD-U 計画が議論されている MCPoP プロジェクト推進本部と共に装置 装置設計チームおよび位相空間計測チームを発足することを提案する。プラズマ核融合分野全体のより真摯な協働の下に進められる計画として、また、プラットフォームの構成要素となる装置については、予算および人材を有効に措置することにより大学とのより密接な連携を可能とする「クロスアポイントメントデバイス(仮称)」などの概念を導入し新しい共同研究組織あるいは体制構築を提案する。 共同研究のフレームワークの改善と評価:新しい研究体制を効率的に運用するために計画の実施および進展に関する評価は重要である。計画の進行状況を評価し臨機応変に中短期目標や対応するプロジェクトを更新することが必要である。プラズマ核融合分野の学術研究はサイエンスとして評価される。学術界において高評価を受けるために、明確な評価関数(論文や開発研究への寄与など)を設定し、評価に基づき臨機応変に連携体制を変革できる体制が必要である。 広報体制:広報は多方面において重要である。核融合炉の実現は、昨今、現在世界中で注目を浴び、プライベート資本による研究推進、政府の後押しによる加速など大いなる支持を得ているが、将来国民の支持を失わないためにも、アカデミアの誠実な態度を示し正しい理解を一般に広げることが肝要である。例えば、ポスト LHD 計画が ITER や原型炉、そして核融合科学にとってどのような意義があるか、また、ミクロ集団現象の理解を促進することが、開発研究に対し具体的にどういった意義を持つか、を広く社会に示すことが重要である。また、優秀な人材の確保には、アウトリーチ活動(展示・体験用のミニ実験の情報交換、サイエンスアゴラなど、大々的なイベントへの共同参加、等)を、担当する研究者の研究時間を確保しつつ、積極的に実施することが推奨される。

(5)その他 分野特性:日本では、昨今、ダークマターや宇宙の起源など人類が抱く多くの自然界の根源的謎に挑む学術課題が数多存在し、多くのノーベル賞受賞者が輩出されている。こうしたサイエンス分野の中にあって、他分野との競争の中で研究費を勝ち取ることは簡単ではない。しかし、プラズマ核融合科学は、持続可能な世界が叫ばれる今、人類存続の根幹に関わるエネルギー問題の解決に繋がり、素粒子物理学、天文学、情報科学など有力な学術分野に匹敵することを想起すべきである。 学際性:核融合科学の多岐に及ぶ課題に対応し学際的プロジェクトが設置できるはずである。核融合科学は元来多岐にわたる学術分野を背景とする研究者が集まった学際的分野である。さらに現在では、日本学術会議見解「プラズマサイエンスーその学術的発展と豊かな未来社会のためにー」に記述されている領域と連携を戦略的に進めることもできる。例えば、急成長している計算機科学や情報科学関連分野と(リアルタイム解析、遠隔制御、自動探索実験などの)はじめとして、数学、素粒子物理、天文物理、複雑系科学、生物物理学、材料科学、量子ビームなど多岐にわたる連携可能性があげられる。ポスト LHD 計画は分野外研究者を十分に惹きつけることができる普遍的で魅力あることが求められている。 臨機応変な目標設定:文部科学省が策定しているロードマップはこれまで 3 年に一回更新されるのが慣例である。今回のポスト LHD 計画の基盤となる「超高温プラズマの「ミクロ集団現象」と核融合科学」に加え、磁場閉じ込めプラズマ研究関連分野からは、これまで「高性能核融合プラズマの定常実証研究」や「非平衡極限プラズマ全国共同連携ネットワーク研究計画」などが重点課題として選択されている。NIFS は分野の研究の進行状況、課題の解決状況に合わせ、プラズマ核融合分野のプレゼンスを示す意味でも、ロードマップ(プロジェクト)の改訂や更新を行うことを推奨する。 装置について: 最後に装置名は装置固有の目標を端的に示すようなふさわしいものが望ましい。また、装置の設計にあたっては、主要課題を確実に達成するために適切なプラズマを生成することが必要である。装置の性能については、予測の不確定性が伴うため、余裕を持たせて設計することが肝要であろう。

委員名簿及び外部有識者名簿

核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ委員名簿 (任期:令和7年8月1日~令和8年3月31日)

[運営会議委員] (所外委員) 井通 暁(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授) ○ 藤澤 彰英(九州大学応用力学研究所教授) 村上 定義(京都大学大学院工学研究科教授)

(所内委員) 坂本 隆一(研究部長、プラットフォーム企画室長)

[運営会議委員以外] (所外委員) 出射 浩(九州大学応用力学研究所附属高温プラズマ理工学研究センター長) 吉川 正志(筑波大学数理物質系准教授) 吉田 麻衣子(量子科学技術研究開発機構 那珂フュージョン科学技術研究所先進プラズマ研究部先進プラズマ第1実験グループ グループリーダー)

(所内委員) 磯部 光孝(MCPoP プロジェクト研究推進本部 CHD—U 実験計画グループ共同リーダー) 山口 裕之(MCPoP プロジェクト研究推進本部 CHD—U 実験計画グループ共同リーダー) 永岡 賢一(MCPoP プロジェクト研究推進本部 CHD 実験計画グループリーダー) ○ 主査

核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ外部有識者名簿

○核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第2回) 伊藤 公孝(中部大学顧問) 小菅 佑輔(九州大学応用力学研究所准教授)

○核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第3回) 仲田 資季(駒澤大学総合教育研究部准教授) 徳澤 季彦(核融合科学研究所研究部位相空間乱流ユニット教授)

審議経過および議事次第

付記1 核融合科学研究所運営会議 CHD-U研究計画の在り方に関するワーキンググループ 審議経過

令和7年 7月10日~令和7年 7月14日:核融合科学研究所運営会議(第103回)(メール開催)において「CHD-U研究計画の在り方に関するワーキンググループ」設置審議 令和7年 8月27日:第1回ワーキンググループ会合 令和7年 9月 9日:核融合科学研究所運営会議(第104回)において「CHD-U研究計画の在り方についての提言」中間報告1 令和7年10月30日:第2回ワーキンググループ会合 令和7年12月 9日:第3回ワーキンググループ会合 令和7年12月24日:核融合科学研究所運営会議(第107回)において「CHD-U研究計画の在り方についての提言」中間報告2 令和8年 1月16日:第4回ワーキンググループ会合 提言(案)ver.1 審議 令和8年 1月26日:提言(案)ver.2 メール審議 令和8年 2月24日:提言(案)ver.3 メール審議 令和8年 3月 2日:「CHD-U研究計画の在り方についての提言」確定 令和8年 3月10日:核融合科学研究所運営会議(第108回)において「CHD-U研究計画の在り方についての提言」付議


核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第1回)議事次第 1 日 時 令和7年8月27日(水) 13:40~15:40(予定) 2 開催方法 核融合科学研究所管理・福利棟4階第3会議室及びオンライン会議 3 議 題 (1)核融合科学研究所の概要について (2)CHD 実験の準備状況について (3)CFQS の状況について (4)CHD-U の候補検討状況について (5)その他 4 配付資料 資料1 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ委員名簿 資料2 CHD-U 研究計画の在り方ワーキンググループへのご説明と諮問 資料3 CHD の準備状況 資料4 CFQS 準軸対称ステラレータの状況について 資料5 CHD-U 候補検討状況 参考資料1 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ規則 参考資料2 今後の核融合科学研究所の在り方についての提言 参考資料3 今後の共同研究の在り方についての提言 参考資料4 今後の大型研究施設計画の在り方についての提言


核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第2回)議事次第 1 日 時 令和7年10月30日(木) 13:40~16:40(予定) 2 開催方法 核融合科学研究所管理・福利棟4階第3会議室及びオンライン会議 3 議 題 (1) 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第1回)議事録(案)について (2) 外部有識者等からのヒアリング ア 伊藤顧問(中部大学)からの説明 イ 小菅准教授(九州大学応用力学研究所)からの説明 ウ 吉田委員(QST)からの説明 (3)その他 4 配付資料 資料1 令和8年度概算要求における学術研究の大型プロジェクトの一覧 資料2 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第1回)議事録(案) 資料3 中部大学・伊藤顧問説明資料 資料4 九州大学応用力学研究所・小菅准教授説明資料 資料5 QST・吉田委員説明資料 参考資料1 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ委員及び外部有識者名簿 参考資料2 CHD-U 研究計画の在り方ワーキンググループへのご説明と諮問(R7.8.27 CHD-U 研究計画の在り方 WG(第1回)資料2) 参考資料3 CHD の準備状況(R7.8.27 CHD-U 研究計画の在り方 WG(第1回)資料3) 参考資料4 CHD-U 候補検討状況(R7.8.27 CHD-U 研究計画の在り方 WG(第1回)資料5)


核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第3回)議事次第 1 日 時 令和7年12月9日(火) 13:40~16:40(予定) 2 開催方法 核融合科学研究所管理・福利棟4階第3会議室及びオンライン会議 3 議 題 (1) 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第2回)議事録(案)について (2) 外部有識者等からのヒアリング ア 仲田准教授(駒澤大学)からの説明 イ 徳澤教授(核融合科学研究所)からの説明 ウ 出射委員(九州大学応用力学研究所)・吉川委員(筑波大学)からの説明 (3)その他 4 配付資料 資料1 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第2回)議事録(案) 資料2 駒澤大学・仲田准教授説明資料 資料3 核融合科学研究所・徳澤教授説明資料 資料4 九州大学応用力学研究所・出射委員、筑波大学・吉川委員説明資料 参考資料1 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ委員及び外部有識者名簿 参考資料2 CHD-U 研究計画の在り方ワーキンググループへのご説明と諮問(R7.8.27 CHD-U 研究計画の在り方 WG(第1回)資料2) 参考資料3 CHD の準備状況(R7.8.27 CHD-U 研究計画の在り方 WG(第1回)資料3) 参考資料4 CHD-U 候補検討状況(R7.8.27 CHD-U 研究計画の在り方 WG(第1回)資料5)


核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第4回)議事次第 1 日 時 令和8年1月16日(金) 13:40~15:40(予定) 2 開催方法 核融合科学研究所研究Ⅰ期棟4階402会議室及びオンライン会議 3 議 題 (1) 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第3回)議事録(案)について (2) CHD-U 研究計画の在り方について (3) その他 4 配付資料 資料 1 開発研究から学術研究に求めること 資料 2 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ(第3回)議事録(案) 資料 3 CHD-U 研究計画の在り方に関する提言(案) 参考資料1 核融合科学研究所運営会議 CHD-U 研究計画の在り方に関するワーキンググループ委員及び外部有識者名簿 参考資料2 中部大学・伊藤顧問説明資料 参考資料3 九州大学応用力学研究所・小菅准教授説明資料 参考資料4 QST・吉田委員説明資料 参考資料5 駒澤大学・仲田准教授説明資料 参考資料6 核融合科学研究所・徳澤教授説明資料 参考資料7 九州大学応用力学研究所・出射委員、筑波大学・吉川委員説明資料