高出力マイクロ波照射技術の研究
Summary
本資料は、UAV(無人航空機)を用いた飽和攻撃への対処を目的とした「高出力マイクロ波照射技術の研究」に関する事業計画・評価概要である。フェーズドアレイ方式の高出力マイクロ波(HPM)技術を確立し、弾切れが生じない低コストな防空システムの実現を目指す研究試作の概要、スケジュール、および期待される効果がまとめられている。
研究概要・現状と課題
高出力マイクロ波照射技術の研究 複数目標に対して同時または瞬時対処可能であり、UAVを用いた飽和攻撃に対して有効とされるフェーズドアレイ方式のHPM技術を確立するものである。
※1 UAV: Unmanned Air Vehicle(無人航空機) ※2 フェーズドアレイ方式:電子的にアンテナの指向性を制御する方式 ※3 HPM: High Power Microwave(高出力マイクロ波)
【現状・課題】 近年の戦闘においてUAVの飽和攻撃の脅威度が増大しており、既存装備では弾数制限やコスト等の観点から対処が困難であるため、飽和攻撃の複数目標に対して同時または瞬時対処可能な高出力マイクロ波技術が有効である。これまで防衛省では電波暗室におけるHPMシステムの成立性を確認しており、UAV脅威への課題を解決するためには屋外においてHPM対処を実証し、技術を確立する必要がある。
ロジックモデル(インプット・アクティビティ・アウトプット・アウトカム・インパクト)
【インプット(資源)】 ・総事業費(予定):約86億円(5か年計画) ※所内試験のための試験研究費は別途計上 ・主な関連(既着手)事業:
- 【高出力マイクロ波技術に関する研究】約11億円(H26~R2年度)
- 【高出力モジュールの研究】約1億円(R2~R3年度)
【アクティビティ(事業内容)】 ・研究試作(空中線装置 等) ・所内試験(屋外での試験で、複数のUAVに対してHPM対処を実証する) ・その他(研究協力による、リスク及び経費の低減を検討)
【アウトプット(技術の確立)】 ・技術的課題の解明
- 電子走査型高出力モジュール技術
- 排熱/冷却システム技術
- HPM管制技術
- 複数UAV対処技術
【アウトカム(成果目標)】 <研究目標等(初期)> ・空中線:高出力モジュールを用いたフェーズドアレイ型の空中線を実現する ・HPM照射:UAVの追尾及びHPMの命中を確認する ・車両搭載:車両搭載HPMシステムを実現する ・効率的な対処:HPMの効果の確認及び効果の判定により効率的な対処を実現する ・効率的な研究:
- UAVへのHPM照射効果の検証や高出力モジュールの設計技術等の先行研究の成果を活用
- 研究協力により必要経費を削減
<技術の適用計画・運用構想(中長期)> ・技術の適用計画:【将来のミサイル対処システム】ミサイル対処用HPMシステムの実証 ・将来の運用構想:【UAV対処HPMシステム】UAVの飽和攻撃に対して、弾切れなく低コストで同時または瞬時対処可能となる。
【インパクト(将来の戦いへの対応)】 ・【政策目標】(大綱との関係):技術基盤の強化(重要技術に対して選択と集中による重点的な投資) ・【施策目標】(中期との関係):技術基盤の強化(重要技術に対して重点的な投資を行うことで、戦略的に重要な装備・技術分野において技術的優越を確保) ・【研究開発ビジョン】:「電磁波領域」の高出力マイクロ波技術の獲得
研究開発実施線表及び総合評価
【研究開発実施線表】 ・実施期間:令和4年度~令和9年度(令和4年~令和8年:本事業(研究試作)、令和8年~令和9年:所内試験)
【総合評価】 UAVを用いた飽和攻撃に対し、多数の目標に同時かつ瞬時対処が可能なフェーズドアレイ方式のHPM技術を確立し、対処を実証するための研究は、研究開発ビジョンに挙げている取組にも合致しており、その必要性は理解できる。 また、先行研究の知見を十分活用するとともに、国外との技術交流を実施することで更なる研究の効率化が期待できる。 低コストで弾切れが生じない防空システムを実現する技術であり、ゲームチェンジの実現や技術的優位性の確保についても期待できることから、本事業に着手することは妥当であると判断する。